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オリーブオイル、エキストラヴァージンの品質をめぐって(2)

オリーブオイル、エキストラヴァージンの品質をめぐって(1)では、オリーブオイルの品質を知る手がかりのひとつが、以下の2つのことを知ることと書きました。

  • 原料オリーブの原産地
  • オリーブオイルを製造(搾油)している場所

 そしてトレーサビリティは、誰がオリーブを栽培し、誰がオイルに加工し、ビン詰めをしたかを知ることができるツールです。

 EUでトレーサビリティ情報の記録を義務付けたのは、2002年に発効された「一般食品法(規則(EU)No.178/2002)」でした。その背景には牛肉のBSE問題や、飼料のダイオキシン汚染とそれを与えられ加工された鶏肉、豚肉、卵が流通し、回収することになった食品スキャンダルの発覚がありました。

 この時に義務となったのは、問題が起こったときに食品事業者は当局の求めに応じて、供給先/供給元の事業者が特定できる情報を開示することです。この「一般食品法」は食品全般を対象にしていますが、いくつかの食品には品目固有の法的規制があります。牛肉、卵、鶏肉、豚肉、遺伝子組み換え作物、はちみつ、オリーブオイル、野菜・果物といった食品です。とくにこれらの食品を生産・加工するうえで透明性の欠如をなくすこと、消費者の信頼を回復することが望まれたといえます。

 オリーブオイルには、2002年に発効された「オリーブオイルの販売規範(規則(EU)No.1019/2002)」という品目固有の制度で「オリーブとオリーブオイルの原産国表示と根拠記録」が規定されました。ただ、この規則は食品ラベルの原産国表示を任意としていました。記載するかしないかは生産者の判断に委ねられました。

 なぜオリーブオイルの食品ラベルに、原産国表示が義務とならなかったのでしょうか?そこにはヨーロッパに産地や種類の違うオイルを抽出し混合する製法の伝統があるからだと言われます。しかし、それはヨーロッパに限ったことではありません。日本で流通しているサラダ油も、菜種油と大豆油を混合したもので品名を食用調合油といいます。また生産単位が大きくなると、原料作物も国産のものだけではなく、複数の国から輸入したものを使用することになります。産地の違うオイルを混合するのは、生産量が多い食用油の商品にもちいられる製造方法そのものの傾向とも言えます。

 しかしながらEUは市場に流通する食用オリーブオイルに、搾油方法や酸度、官能試験から判定される特性によって分類される品名を定めています。現在、オリーブオイルの食品ラベルには販売するオリーブオイルを4つの品名に分類して表示することが義務付けられています(規則(EU)No.29/2012、規則(EU)No.1169/2011)。「エキストラヴァージン・オリーブオイル」、「ヴァージン・オリーブオイル」、「精製オリーブオイルとヴァージン・オリーブオイルを混合した油」、「オリーブポマースオイル」の4つのうち該当する品名が記載されます。

 この分類がオリーブオイルの品質を分けるものであることは周知のとおりです。つまり市場に数ある食用油と違いオリーブオイルは、EUが法律で品質ごとに分けるひとつの大きな基準を定めている油ということになります(生産から流通まで食品の品質を決める要素は他にも多数あります)。それだけ消費者がその品質に関心を寄せてきたということでもあります。そして、その品質を裏付けるもう一つの要素が原料オリーブの原産地ですから、原産国表示が任意とされたことは完全な消費者の保護にはなりませんでした。

 トレーサビリティを定義した「一般食品法(規則(EU)No.178/2002)」は2002年に発効されましたが、適用になったのは2005年です。規則が発効してから順次、事業者がそれぞれトレーサビリティ情報を文書化し記録できるよう準備して全事業者の足並みがそろうまでの猶予期間です。

食品事業者は製造日と原材料の情報がインプットされたコードを商品ごとに発行します。また商品のロット(一回に生産された商品のまとまりのこと)と商品がスーパーマーケットなど販売者に納品されたことを記録します。もし食品に何か問題があったときには供給元の事業者を遡っていくことができ、また供給先からは速やかに問題の食品を回収することができます。

 このような原産国表示の経緯があり、またトレーサビリティの整備には時間がかかりました。規則が適用されてからも消費者の誤解を招く食品ラベル表示や、エキストラヴァージン・オリーブオイルの偽装問題は市場に蔓延していました。消費者はエキストラヴァージン・オリーブオイルの真正性がわかりませんし、生産者は不公正な市場競争にさらされていました。低品質のオリーブオイルをエキストラヴァージン・オリーブオイルと銘打ってバーゲン価格で販売される偽装オイルが流通していたためです。

 

(続きます)

 

 

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