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オリーブオイル、エキストラヴァージンの品質をめぐって(3)

 まだまだ続く!シリーズ「オリーブオイル、エキストラヴァージンの品質をめぐって」では、エキストラヴァージン・オリーブオイルに特化して書いています。

 先日、「そもそもエキストラヴァージンとヴァージンオイルの違いって何?」というご質問をいただきました。

 シリーズ(2)の流れから行くと、今回は市場を混乱させる偽装/偽造エキストラヴァージン・オリーブオイルの説明を予定していました。しかしオリーブオイル自体の説明をする前に、偽装や偽造オイルの説明をするオリーブオイル販売者ってどうなのか?と思わないでもなく…

 そこで今回はイタリア農業組合(COLDIRETTI)がロンバルディア州の消費者協会(ACU)と協同してオリーブオイルについて説明しているサイトを参考にして、簡単に一般的なエキストラヴァージン・オリーブオイルとその他のオリーブオイルの説明をはさむことにいたします。

  オリーブの実に含まれる脂肪分は、果実の細胞の中に閉じ込められているので、それを取り出すには実を砕いて(つまり細胞を壊して)、撹拌する必要があります。そうしてできたオリーブのペーストをプレスして水分と固形分に分けます。その後、遠心分離法か油圧式の浮上法で、油と水分に分離します。
 こうして搾ったオイルがビン詰めされて販売されるもののうち、

  • 酸度が0,8%以下のもの
  • 香り、味わい、後味(最後に舌や喉の奥で感じる味)、色といった人間の五感で判断する特性を見て完全(欠陥の要素が皆無)なもの

 それを「エキストラヴァージン・オリーブオイル」といいます。
 またエキストラヴァージンの基準は満たさないが、総じて味わいも好ましく、酸度も高すぎなければ「ヴァージン・オリーブオイル」に分類され、精製オイルに混ぜて使われます。

参考資料:「Mangio sano, informato e soddisfatto /知って、満足して、健康に食べる(伊語)」ーイタリア農業組合
※サイトページに記載されている酸度の値に間違いがありますが、本稿は現行法の規則 (EEC) No. 2568/91改正・統合版の値に従っています。

 エキストラヴァージンとヴァージンは、オリーブの実を機械的または物理的な方法でのみ圧搾したオイルであるという点では同じです。違う点は品質ということになります。

 市場にはその他に精製オイルも流通しています。その品質に合わせて値段も下がっていきます。

 原料オリーブの品質が高くなく、圧搾したオイルの酸度が高すぎる、また味わいに欠陥がある場合、オイルは化学的な処理を施し精製されます。脱酸、脱色、脱臭すると、透き通ったオイルになり匂いや味はほとんどありません。そこにヴァージン・オリーブオイルを加えることで色と味わいがつきます。こうしてできたものを「オリーブオイル」*(ややこしいですが、オリーブオイルの中でもこのように呼ばれます。)といいます。有機物の大半が取り除かれているため、エキストラヴァージンに比べて保存しやすいです。しかし多くの貴重な成分を失うので、良質のオリーブオイルの特徴であるビタミンE、またポリフェノールのような抗酸化物質をあまり含んでいません。

*「オリーブオイル、エキストラヴァージンの品質をめぐって(2)」で説明しましたEU規則が定義している「精製オリーブオイルとヴァージン・オリーブオイルを混合した油」にあたります。

 また、日本の市場に流通する「ピュアオリーブオイル」や「オリーブオイル」といった「商品名」のオリーブオイルもこれにあたるようです。各メーカーによって違います。

参照元:「エキストラバージンオリーブオイルとオリーブオイル(ピュア)の違いは?」-日清オイリオ

 日本の食品表示法にはオリーブオイルの種類を表示する規定はありません(2017年9月現在)。すべてのオリーブオイルの「名称」に「食用オリーブ油」、有機認定を受けていれば「有機食用オリーブ油」と表示されます。

 エキストラヴァージンとヴァージン・オリーブオイルを抽出するために、オリーブの実を機械的または物理的な方法で圧搾します。そのときできた搾りかすにはまだ少量の油分が含まれています。搾りかすを乾燥させ、溶剤を用いてオイルを抽出します。いくつかの工程を経て溶剤を除去した後にできるのが、「オリーブポマースオイル」と呼ばれる精製オイルです。味わいや色はありません。少量のヴァージン・オリーブオイルを加えることで味わいを良くします。オリーブポマースオイルの品質は、オリーブの実から抽出されるオイルの中では一番低くなります。

参考資料:「Mangio sano, informato e soddisfatto /知って、満足して、健康に食べる(伊語)」ーイタリア農業組合

 

 オリーブオイルの分類についての説明に、「酸度」が出てきました。
 この「酸度」というのは、抽出したオイルを検査機関に提出して、化学分析にかけて出される数値のひとつです。この数値が低いほど健康なオリーブの実を素早く搾油したということを示し、品質の良さを表します(しかし酸度の低さだけが品質の高さを保証するわけではありません)。

 現行の「オリーブオイルとオリーブポマースオイルの特性と関連する分析方法(規則 (EEC) No. 2568/91改正・統合版)」は、オリーブオイルを9種類に分類しています。しかし実際に消費者に販売できるのは、上記の4種類のオリーブオイルになります。オリーブオイルを分類するためのパラメーターとして酸度の値を以下のように定めています。

オリーブオイルの分類 酸度
エキストラヴァージン・オリーブオイル ≦ 0,8
ヴァージン・オリーブオイル ≦ 2
オリーブオイル ≦1
オリーブポマースオイル ≦1

 

 ところで、オリーブオイルの酸度というのはいつも同じ数値が出るものではなく、収穫年によって変化します。「素早く搾油する」のは人為的な部分ですが、「健康なオリーブの実」は天候に左右される部分であり人為的にコントロールしきれないからです。

 2014年はイタリアのオリーブオイル生産量が激減した年でしたが、それはイタリアのオリーブ栽培者がそれまで経験しなかった天候によるものでした。イタリアのスローフード協会が毎年出版しているエキストラヴァージン・オリーブオイルのガイドブックがありますが、2015年版にその時のことを記述していました。

 この本によれば、それまでになかったような天候が、2014年のオリーブの開花と結実に影響を及ぼしたということでした。温暖な夏季に雨量が非常に多かったことで、オリーブの実のサイズが大きくなりました。それがオリーブミバエを引き寄せた一方で、フェノール系成分の含有量が少ないオリーブになりました。また、この気候によって寄生虫が蔓延し、その対策でオーガニック系の農薬、化学農薬が散布されました。こういった事情がオイルに含まれる遊離酸の量を増やした、つまり酸度を上げたとのことです。そして遊離酸が多いということは、含まれる酸素の量が多いということになるのですが、そのためオイルが酸化することになりました。

 地中海性気候の地域では異常気象といえる天候に直面した2014年は、慎重にタイミング良く害虫対策を施せたオリーブ生産者もいれば、生育状況の悪さに対策をあきらめた生産者もいたようです。スローフード協会は本書で、農法や害虫への防御戦略を再考する必要性を説いています。

参考図書:Diego Soracco編,  Guida agli extravergini 2015,  Slow Food Editore出版

 オリーブオイルの「酸度」というひとつの指標は、このように自然環境にも左右されていることがわかります。農産物加工品であり精製を施さないエキストラヴァージン・オリーブオイルは、毎年変わらない同じ型になるのではなく、その年ごとの自然環境とそれに対処する人の営みが反映されたものにでき上がるといえます。

 

(続きます)

 

 

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